腎臓内科教授 神田 武志 Takeshi Kanda
教授あいさつ Message

島根大学医学部腎臓内科のホームページをご覧いただき誠にありがとうございます。
2023年1月1日付けで、腎臓内科教授(第四内科)を拝命致しました神田武志と申します。2025年4月より医学部内科学講座(腎臓内科学)として独立し、改めましてご挨拶申し上げます。
島根県は全国有数の高齢化率、地域医療問題から10年先の日本の医療を映し出すといわれています。将来の日本を映し出す島根県で全国のモデルとなるような加齢を中心とした地域医療、臨床、研究を推進し“健康長寿島根”ひいては“健康長寿日本”を目指して参ります。
全国の慢性腎臓病の患者数は約2000万人(成人の約5人に1人)と推計されており新たな国民病といわれています。加齢とともに徐々に腎機能は低下し、後期高齢者では3人に1人、90歳以上の超高齢者では約9割が慢性腎臓病と診断されます。今後島根県内の高齢者の割合はさらに増加し、2045年には約40%と試算されています。よって島根県では加齢を原因とした腎臓病が増加することが危惧されます。慢性腎臓病が悪化しますと透析導入に至りますが、島根県では高齢での透析患者の割合が増加しています。また慢性腎臓病の危険因子である高血圧の島根県内の有病率は高齢者で50%以上となっています。地域の先生方のご協力を仰ぎながら“二人主治医体制”で慢性腎臓病、高血圧診療を中心とした高齢化対策に取り組む所存です。島根県は東西約230kmと長く、特に西部地域・離島の医師不足・医療偏在が課題となっています。各圏域に腎臓内科専門外来を設置し地域の先生方と連携をとりながら医療格差解消に努めています。最新のエビデンスに基づいた治療を行っても残念ながら末期腎不全に至る場合があり、腎代替療法に関して患者さんの希望、状況にあった透析方法を提案しています。中でも島根県は人口比で腹膜透析が多い地域です。山間部や離島など透析にアクセスの不良の患者さんがおられ、高齢化に伴い合併症を複数もつ患者さんも増えています。透析患者さんを取り巻く環境改善、予後の延長に向けて多職種で取り組んで参ります。

研究に関しては高齢化・島根地域にフォーカスした研究を推進しています。腎機能は加齢と共に低下し高血圧、肥満、腎炎などの併存疾患があると更にその低下速度は早まります。腎機能低下をグラフ化し腎臓寿命を可視化することでヘルスリテラシーを高めると同時に“腎老化”の機序に迫っていきます。島根県は百寿者が10年連続全国最多であり慶應義塾大学医学部百寿総合研究センターと共同で県内百寿者の健康長寿メカニズムの解明のため訪問調査を行っています。基礎研究として腎臓老化の解明を目指し、NAD代謝を中心とした代謝異常に着目し遺伝子改変マウスなど分子生物学的な手法を用いて研究を行っています。
超高齢化の進む島根県から、世界に先駆けて健康長寿の研究成果を発信していきます。今後とも腎臓内科にご指導、ご支援を賜りますよう何卒よろしくお願い申し上げます。